回転格子を用いた一様等方性乱流場の生成

回転格子を用いた一様等方性乱流場の生成

時間的な平均流のない一様等方性乱流場は理論的な扱いが容易であるので,理想的な流れ場として基礎的な乱流研究において多く用いられている.理論的に扱いやすい乱流としては風洞を使った生成が多いが,定点観測を行う場合や,空間的に一様な乱れ強さを持つ乱流を必要とする実験の場合には,乱れ生成物(格子,じゃま板,棒など)から離れるに従って乱れ強さが減衰することや,大きな乱れを生成しようとする際に装置の大型化と一様流の増大が避けられないことなど,やや不利な点があった.
近年,空間的な領域としては大きくないものの,より一様で等方的な乱流場の生成法として,振動格子や回転格子を用いた装置が提案されている.
本研究では図1に示すような回転格子を用いた方法により,格子間中心部分に乱れ生成を行っている.乱流統計量を計測するには,空間的な速度分布や時間解像度の高い速度データが必要となるが,本研究では空間的な速度計測にParticle Image Velocimetry (PIV),時間解像度の良い速度計測にLaser Doppler Velocimetry (LDV)を併用することで,各乱流統計量を取得している.

図1 実験装置及び速度計測システム

図2 装置内乱れ強さ分布とエネルギスペクトル

図2の左図は装置中心付近の垂直軸方向に沿った乱れ強さの分布である.格子回転数を制御することで,任意の乱れ強さを持った流れ場を生成することができることが分かる.また,図2の右図から,流れ場のエネルギスペクトルがいわゆる乱流場の特徴を持っていることを示している.

将来的にこの流れ場を用いて,様々な粒子体積率で気流中に分散している固体粒子の拡散や分散相の軌跡を追跡する実験が行われることが期待される

参考文献

  • Srdic A., Fernando H. J. S. and Montenegro L., “Generation of nearly isotropic turbulence using two oscillating grids”, Experiments in Fluids, Vol. 20, (1996), pp 395-397.
  • Friedman P. D. and Katz J., “Mean rise rate of droplets in isotropic turbulence”,Phys. Fluids, Vol. 14, (2002) pp 3059-3073.
  • Muto M., Ushijima T., Oshima N., Oshima M. and Kobayashi T., “Flow field statistics of nearly isotropic turbulence generated using rotating grids”, Proceedings of 9th Asian Symposium on Visualization (2007).