患者固有の脳循環に対する1D-0D血流シミュレーション統合システムの開発

頸動脈狭窄症に対するステント留置術に起因する脳循環の血流変化を予測するためには,患者固有の血流シミュレーションは実用的な技術である.外科手術によって血流は変化するので,全身循環の効果を考慮することが必要になる.1D-0D 血流シミュレーションは,3D-1D-0D血流シミュレーションと比べて実用性が考慮されており,全身循環を考慮に入れた患者固有の脳循環について処理が可能である.本研究の目的は,個々の患者に対する脳循環情報を得ることができるMRI, CT, SPECT等のマルチモーダル医用データと結合した1D-0D血流シミュレーション統合システムを開発することである.

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 図1.1D-0D血流シミュレーション統合システムの概要

図1にあるように統合システムは,画像ベースの血管形状モデリングシステム(V-Modeler),1D-0D 血流シミュレーション,3D可視化システムの3つの要素からなる。血管形状モデリングシステムは,医用画像から血管形状を中心線ネットワーク構造として抽出し,中心線に沿った半径と血管長を定量化する.また,モデリングの過程で,狭窄率も定量化される.これらの定量化データは,1D-0D血流シミュレーションにおいて使用される.患者の年齢,血圧データ,血流量データ(PC-MRI, SPECT)を取り込んで,1D-0D血流シミュレーションは実行される.3D可視化システムは,1D-0D血流シミュレーションの結果(流量,圧力,半径)を,モデリングシステムから得られた中心線データへマッピングすることによって,3D可視化を実現する.

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図2.頸動脈狭窄症に対するステント留置術の術前術後の1D-0D血流シミュレーションの3D可視化結果(血流量)

図2は,頸動脈狭窄症に対するステント留置術の術前・術後について,1D-0D血流シミュレーションを行った結果(血流量)を3D可視化したものである.術前における内頚動脈の血流量は狭窄側では少ない状態にあるが,術後は左右均等になることがわかる.1D-0D血流シミュレーションの結果の検証に関しても研究を進めている[2]

 

参考文献

[1] Kobayashi M, Hoshina K, Yamamoto S, Nemoto Y, Akai T, Shigematsu K, Watanabe T, and Oshima M. Development of an Image-Based Modeling System to Investigate Evolutional Geometric Changes of a Stent Graft in an Abdominal Aortic Aneurysm. Circulation advpub, 2015.

[2] Zhang H, Fujiwara N, Kobayashi M, Yamada S, Liang F, Takagi S, Oshima M. Development of a Numerical Method for Patient-Specific Cerebral Circulation Using 1D-0D Simulation of the Entire Cardiovascular System with SPECT Data. Ann Biomed Eng. pp 1-13. 2015 Dec 31.

[3] Kobayashi M, Harada A, Zhang H, Yamada S, Oishi M, Oshima M. Development of an integrated 1D-0D simulation system for patient specific cerebral circulation. Interdiciplinary Cerebrovascular Symposium Intracranial Stent Meeting (ICS2015), 2015.11.13-14.