赤血球と周囲流体の相互作用の可視化計測に向けた共焦点マイクロPIVシステムの開発

赤血球と周囲流体の相互作用の可視化計測に向けた共焦点マイクロPIVシステムの開発

両凹円板形状で膜構造を持ち, 高い変形能を有する赤血球は, 微小循環系において, タンクトレッド, タンブリング, 軸集中などの特殊な挙動を伴い, 流動抵抗の低減などの役割を担っていると考えられている. しかし, その挙動における赤血球と周囲流体との相互作用の詳細は不明点が多い.赤血球とその周囲流動の相互作用の解明には, 生体環境に近い流れ場で高い空間分解能かつ, 継続的な計測が必要になる. 近年開発された高い空間分解能で速度計測が可能な共焦点マイクロPIV(Particle Image Velocimetry: 粒子画像流速測定法)は過去に微小流れ内の赤血球の速度計測に適用された.しかし共焦点マイクロPIVではその原理上, 遅い流れに計測が限られ, 実際の生体環境である速い流れ場での計測は困難である. また, 直径8mmの赤血球周りの計測は高倍率になり, 視野領域が縮小するため, 観察領域内から赤血球及び周囲流体が流出してしまい継続的な観察が難しい. 以上より, 赤血球と周囲流体の計測に最適な計測技術は未だに確立されていないと言える.そこで本研究では, 計測流路を顕微鏡上の空気軸受け式の自動ステージに固定し, 流れと逆方向に移動させながら観察することにより, 赤血球の視野領域からの流出をせずに, 生体環境に近い流れ場で赤血球とその周囲流体の詳細な挙動を継続的に計測できる“追従型共焦点マイクロPIVシステム”を開発した. そして, 開発した計測システムに蛍光波長の分離ユニットを組み込んで微小流路内の赤血球と周囲流動の同時計測を行い, その相互作用について考察した.計測システムの図1に示す. 赤血球膜上に付着させた蛍光粒子と周囲流体に混入させた蛍光粒子はそれぞれ異なるレーザで励起され, 二つのカメラに別々に画像として保存される.

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.1計測システム

 

2, に赤血球膜, 3に周囲流体の計測画像をそれぞれ示す. 赤丸で囲まれた部分は流れ内の赤血球になる. 2より赤血球膜に付着させた蛍光粒子より赤血球の位置がはっきりと認識できる.

 

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2 PIV画像(赤血球: t=0.04s)             図3 PIV画像(周囲流体: t=0.04s

4に図2における赤血球Aの時系列の画像を示す. 赤血球の形状は変化していないが, 赤血球膜上の粒子の位置が変化していることから, この赤血球は膜が回転しているタンクトレッド運動をしているといえ、開発したシステムを用いることによってタンクトレッド運動の可視化計測に成功した.

 

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4 赤血球膜上のトレーサ粒子位置の時系列変化(赤血球A

 

5, 6にタンクトレッド運動をしている赤血球周りの周囲流体の流速vの速度分布を示す. 赤血球周りの領域Aと領域Bにおいて流速に差が見られるのが確認された. 7に赤血球重心に対する周囲流体と赤血球膜の相対速度を示す. 周囲流体がタンクトレッド運動をしている赤血球を回り込むように流れている様子が確認できる.

 

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5 速度vの流速分布(t=0.04s)                          6 速度vの流速分布(t=0.08s)

 

7 赤血球重心に対する赤血球膜・周囲流体の相対速度(赤血球A, t= 0.04s)

 

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