多波長共焦点マイクロPIVを用いたマイクロ混相流の計測
2つ以上の異なる物理量や流動現象の解明のため、多波長共焦点マイクロPIVシステム (図1)を開発した。計測システムは木下らが開発した共焦点マイクロPIVシステム(2005)を元に改変したもので,2つ以上の異なる相を同時計測するために波長分離光学系を共焦点スキャナの後方に設置し,撮像デバイスに2台のハイスピードカメラを用いている.励起光には波長488nmおよび532nmの2色のレーザを同軸に乗せ、計測対象を励起している。対象から放出された光は共焦点スキャナ内のバリアフィルタで散乱光をカットして,蛍光のみを分離光学系に導いている(図2).
図1 多波長共焦点マイクロPIVシステムの概要
図2 波長分離ユニットの光学デザイン
計測対象として、固液混相流を選んだ。アルギン酸ゲルビーズ(図4)が分散した流体をPDMSで作成したマイクロ流路(図3)に流している。
図5にフィルタリングされた画像を示す。一台のカメラで短波長側(アルギン酸ビーズ内に分散した黄緑色蛍光粒子)のみを通過するフィルタリングを行った画像を取得し(同図左)、もう一方で長波長側(周囲流に分散した赤色蛍光粒子)のみを通過するフィルタリングを行った画像を取得している(同図右)。図より、非常に鮮明に波長分離ができている様子が分かる。
図3 PDMSで作成したマイクロチャネル
図4 アルギン酸マイクロビーズ内の黄緑色蛍光粒子と
周囲流に分散した赤色蛍光粒子の蛍光画像
図5 波長分離された各相の画像 (左:短波長パスフィルタを通したビーズ内の蛍光粒子像、右:長波長パスフィルタを通した周囲流に分散した蛍光粒子像
図6に流れの速度分布とアルギン酸ビーズ内に埋め込まれた粒子の移動速度を示す。ビーズは固体であるため、内部に流動は無い。ビーズ内部の粒子は同じ高さの断面内においては均一な速度を持っており、また高さの変化に伴いその速度もリニアに変化する。このことから、ビーズは高い真球度を持っており、角速度一定で回転していることが証明できる。
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私たちのシステムはマイクロ流体デバイス内部で行われる混相流やマルチフィジクス現象を定量的に計測することが可能である。このことはマイクロ流体デバイスにとどまらず、マイクロ生化学システムやドラッグデリバリーシステムの開発にも非常に有用であると考えられる。
参考文献
- Oishi, M., Oshima, M. and Kobayashi, T. High-speed PIV Measurement of Blood Flow in the Modeled Artery. Proceedings of PSFVIP-4, Chamonix France, Paper No.F4098, 2003.
- Oishi, M., Oshima, M. and Kobayashi, T. PIV Measurement of Flow in the Modeled Artery using High Speed Camera. Proceedings of the 7th Asian Symposium on Visualization, Singapore, 2003
- 大石正道, 大島まり, 佐賀徹雄, 小林敏雄, Dynamic PIV を用いた血管モデル内拍動流の時系列計測, 可視化情報Vol.24, Suppl. No.2,可視化情報全国講演会(愛媛2004), pp.165-168
- Oishi, M., Oshima, M. Saga, T. and Kobayashi, T. Dynamic PIV Measurement of Pulsatile Flow in the Modeled Artery. Proceedings of 11th International Symposium on Flow Visualization, Notre Dame, Indiana, USA, Paper No.099, 2004.
- M. Oishi, M. Oshima, Y. Bando, T. Kobayashi, Time-resolved Stereo PIV Measurement of Pulsatile Flow in the Modeled Artery, The 5th Pacific Symposium on Flow Visualization and Image Processing, 2005, Australia, pp. 63-64